バーコード基礎知識
一般的に、バーコードとは、「幅が変化する平行かつ長方形のバーまたはスペースの配列によって情報をコード化したもの」とされており、一次元シンボルや一次元コード、リニアコードとも呼ばれることがあります。バーコードは、もともとは小売業界において商品の情報を早く正確に把握するために開発された自動認識(Auto-ID)技術でしたが、現在では、流通、物流、製造、行政、医療、研究、イベント等、あらゆる分野で活用されています。
バーコード体系別
バーコードは主に下記のような種類があります。
JAN(Japanese Article Number)
JANは、流通用の共通商品シンボルとして規格化されたバーコードで、国際的なバーコードのEAN(European Article Number)と同じ仕様となっています。また、アメリカの共通商品シンボルのUPCと互換性があるので、商品の輸出入にもそのまま利用できます。
NW-7(CODABAR)
NW-7は、Narrow(狭い)とWide(広い)サイズの、7本のバーとスペースで構成されているのが、その名称の由来となっています。比較的構成が単純なため、高精度の印刷は要求されませんが、収納できる情報量はあまり多くありません。
Code 2 of 5(Industrial 2 of 5)
Code 2 of 5(Industrial 2 of 5)は、現在も使用されているバーコードの中では最も古いバーコードです。ITFなど、1つのキャラクタを5本(うち2本が太い)のバーで表すバーコードのもとになったバーコードです。
ITF(INTERLEAVED 2 of 5)
ITFは(INTERLEAVED 2 of 5)は、5本(うち2本が太い)のバーもしくはスペースで1つのキャラクタを表します。非常に情報密度が高いという特徴がありますが、「桁落ち」が発生しやすいという欠点もあります。
Code39
Code39は、誤読が少なく英数字と記号が使用できるため、主に産業用の作業指示票や現品ラベル、軍事の資材管理などに使用されています。また、比較的構成が単純なため、高精度に印刷は要求されません。
Code93
Code93は、4つある制御記号と組み合わせることによって、同じバーパターンでも異なる文字を表現することができます。また、チェックデジットが2つあるという、他のバーコードにはない珍しい特徴があります。
Code128
Code128は、パソコンの入出力に対応するために開発されたバーコードで、制御コードも含めたアスキーコードの128文字を全て使用できるという特徴があります。情報密度が高く信頼性も高い反面、バーのサイズが4種類あるため高精度の印刷が必要となります。
GS1 DataBar(RSS)
GS1 DataBarは、以前はReduced Space Symbology(省スペースシンボル)と呼ばれていました。従来のバーコードと比べて、GS1 DataBarはデータが圧縮することが可能なので、より少ないモジュール数で多くの情報を収納できます。
GS1標準シンボル
- ○GS1
- GS1とは、サプライチェーンの効率化と可視化のために、流通情報標準化を推進している国際機関です。本部はベルギーのブリュッセルにあり、現在では110以上の国・地域が加盟しています。
- ○GTIN(Grobal Trade Item Number)
- GTINとは、GS1が推進する国際標準の商品識別コードの総称です。現在使われている国際標準の商品識別コード(JANコード、UPC、集合包装用商品コード)を、GTINという呼称に統一化することになりました。
国際的には、JANコード(13桁)をGTIN-13、UPCをGTIN-12、JANコード(8桁)をGTIN-8、集合包装用商品用コードをGTIN-14と呼びます。- ※GTINについては、「GTIN(Grobal Trade Item Number)」をご覧ください。
- ○GS1アプリケーション識別子(AI)
- アプリケーション識別子とは、様々な情報の種類とフォーマットを管理する2桁から4桁のコードです。商品に関連するさまざまな情報(属性情報)をバーコードに表現する際に使用します。
- ※アプリケーション識別子については、「GS1アプリケーション識別子(AI)」をご確認ください。
- ○GTINとバーコード
- GTINを表す際に使用するバーコードは、下記の通りになります。
商品識別コード | バーコード | |
商品識別コードのみを表示 | 商品識別コードと属性情報を表示 | |
GTIN-13、GTIN-12、GTIN-8 | JANコード(UPC) | GS1 DataBar |
集合包装用商品コード(GTIN-14) | ITF | GS1-128 |
バーコードの特徴
- ○特許が公開されている
- バーコードの種類は多数ありますが、その特許はほとんどがIBMによって買い取られ、無料で公開されていますので、どの国の誰もがバーコードを利用できます。
- ○周辺機器の充実とシステムの普及
- プリンタやリーダーなどの周辺機器が充実しているのも普及の要素です。また、POS・FAなどシステム実績が多く、導入に際しての立ち上がり・実用化が早くできます。
- ○ランニングコストが安い
- 磁気やRF-ID(電波による個別認識)に比べ格段にコストが安く抑えることができます。
- ○磁気などの影響を受けない
- 磁気カードは磁気に弱く、RF-IDは温度や湿度の変化に弱いのですが、バーコードはこれらの影響を全く受けません。
バーコードの欠点
- ○書き換えができない
- バーコードは読み出し専門ですから、磁気やRF-IDなどのようにデータの消し込み、書き替えはできません。
- ○汚れなどに弱い
- 通常は紙、またはそれに近い平面の素材に印字されますので、色のついた汚れが付きますと読み取り不能になります、また水濡れや擦過に弱いという欠点もあります。しかし、表面ラミネートすることによりそれらの問題を解消でき、実際は実用の妨げになってはいません。
バーコードの仕様
- ○バーコード体系
- バーコードには様々な体系があるため、目的に合致したものを選択する必要があります。
【主なバーコード体系】 JAN, NW-7(CODABAR), Code39, ITF(INTERLEAVED 2 of 5), Code128 - ○バイナリレベルとマルチレベル
- バーコードには、バー及びスペースの幅が二段階しかないバイナリレベルのバーコードと、複数の幅があるマルチレベルのバーコードの二種類があります。バイナリレベルのバーコードと比べて、マルチレベルのバーコードの方が解像度が高いプリンタが求められます。NW-7、Code39、ITFはバイナリレベルのバーコード、JAN、Code128、GS1 DataBarはマルチレベルのバーコードです。
- ○ナローバーとワイドバー
- バイナリレベルのバーコードを構成するバーのうち、細いバーのことをナローバー、太いバーのことをワイドバーといいます。また、マルチレベルのバーコードでも、最も細いバーのことをナローバーと呼びます。ナローバーの幅は、印字するプリンタの解像度により異なります。ナローバーの幅が細ければ細いほど、バーコードのサイズが小さくなりますが、印字するプリンタに高い解像度が求められます。
- ○ナローバー/ワイドバー比率
- バイナリレベルのバーコードのナローバー/ワイドバー比率は、1:2~1:3の範囲に収めることが決められており、通常1:2.5が推奨されています。比率がこの範囲外の場合、バーコードを読み取れなくなる恐れがあります。マルチレベルのバーコードの場合、比率は正確に定められており、許容範囲はほどんどありません。
- ○チェックデジット
- チェックデジットとは、読取ったデータが間違いないかチェックするための数値です。スキャナでバーコードを読み取る際、読み取ったデータから算出した数値と、バーコードに付与されたチェックデジットを比較します。数値が一致すれば正確に読み取ったと判断し、一致しなければ読み取りに誤りがあったと判断します。チェックデジットの計算式には様々な種類があります。チェックデジットの計算式についての詳細は、各バーコードの説明ページをご確認ください。
- ○桁数(チェックデジット含む)
- チェックデジットを含めた桁数を決めます。ITFの場合、奇数桁数は選択できないので注意が必要です。
- ○スタート/ストップキャラクタ
- スタート/ストップキャラクタとは、バーコードの始まりと終わりを示す文字のことです。NW-7ではa、b、c、dのいずれかの文字、Code39では*を使用します。JAN、ITF、Code128はスタート/ストップキャラクタがない代わりに、同様の働きを持つバーがあります。
- ○バーコードルビ書体とスタート/ストップキャラクタのルビ表示有無
- 通常、バーコードルビの書体にはOCR-B擬似フォントを使用します。それ以外の書体では、一般に明朝体およびゴシック体を選択します。また、NW-7やCode39の場合にはスタートコードおよびストップコードをルビの表示に加えるか否かを決めます。
例:Code39ルビの表示有りの場合には、「*1234*」のように表示されます。 - ○バーコード高さ
- バーコードの高さ決めます。一般的には10mm、最低でも3mmは必要です。
- ○クワイエットゾーン
- クワイエットゾーンとは、バーコードの左右の余白部分のことで、これが十分に確保されていないと、スキャナはどこからバーコードが始まり、どこでバーコードが終わるのかを認識できず、読み取り不良となります。クワイエットゾーンは、一般的にバーコードの細いバーの10倍以上、あるいは2.54mmの、いずれか広いほうの幅が必要となります。基本的にバーコードは全てクワイエットゾーンが必要ですが、GS1 DataBarのみ例外的にクワイエットゾーンが不要となっています。
バーコードに関する注意点
バーコードは、以下の場合に読み取り不良が発生しますので、これらに注意して仕様を決める必要があります。
- ○不適切な色で印刷した場合
- バーコードスキャナは、赤色光線を発射し、その反射してくる光線でバーコードを読んでいます。ですのでバーコードは反射する部分としない部分をはっきりさせる必要があり、バーの部分は赤色を吸収する色(黒、青、緑等)バックの色は逆に赤を反射する色(白、赤、黄等)にしなければなりません。目で見てバーコードがわかるからと、バーコードのバックの色を赤色を吸収してしまう色(青、緑等)にしてしまったり、バーの部分を赤色を反射する色(赤、黄等)にしてしまうと、読み取り不良となります。
- ○印刷用紙が不適切な場合
- あらかじめ色がついている用紙の場合、前項のような注意が必要です。また、金、銀、パールなどの加工をした用紙に直接印刷した場合、スキャナから出た光線の反射の仕方で、光がスキャナに向かって反射したり、ぜんぜん違う方向に反射してスキャナに正しく光が届かなくなり、読み取り不良となります。これらの用紙に印刷する場合は、あらかじめ白など赤い光を反射する色を印刷してその上にバーコードを印刷する必要があります。
- ○クワイエットゾーンが不足している場合
- クワイエットゾーンが不足していると、スキャナがバーコードの開始と終了を認識できず、読み取り不良となります。
- ○ガラス・ポリ容器への印刷方法が不適切な場合
- 円筒形の容器に通常(バーが縦になる方向)に印刷すると、スキャナから見てバーの真ん中は太く、両端に行くほど細く見え、読み取り不良の原因となりますので、全体が同じに見えるように90度回転して横向きに印刷する必要があります。
- また、一般的にバックを白、バーを黒で印刷するパターンが推奨されますが、不透明な色つきのプラスチック容器に印刷する場合はその容器の色によって、透明なガラス瓶へ印刷する場合はその内容物の色によって、以下のように印刷しても読み取りが可能です。
読み取り可の例 | 読み取り不可の例 |
バー部分が赤色光を吸収、バックの部分が赤色光を |
バー部分とバックの部分の色が両方とも赤色光を反射する、 |
読み取り可の例 | 読み取り不可の例 |
白をバックに印刷し、艶の影響をなくす |
材料の艶でバーコードが認識できなくなる |
読み取り可の例 | 読み取り不可の例 |
クワイエットゾーンが確保されている |
クワイエットゾーンが確保されていない |
読み取り可の例 | 読み取り不可の例 |
湾曲による見た目の影響がほとんどない |
湾曲によりバーコードが変形しているように見える |
容器もしくは内容物が赤色光を反射する |
容器もしくは内容物が赤色光を反射する |
内容物が赤色光を透過する場合、 |
関連技術情報
◯自動認識基礎知識 ◯二次元コード基礎知識 ◯金属・樹脂銘板基礎知識 ◯シール/ラベル/ステッカー基礎知識 ◯カード基礎知識