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金属・樹脂銘板基礎知識

「JIS Z 8304 銘板の設計基準」では、「銘板とは、金属、プラスチック又は紙を素材とし、必要な事項を容易に消えない方法で表示したもの」と定義されています。一般的には、名板や銘鈑、ネームプレートなども同義語として使用されています。
※「JIS Z 8304 銘板の設計基準」については「銘板の規格」ページをご参照ください。

製法

当社では、金属・樹脂銘板を主に下記の製法により製作しています。

製法 製法概要
エッチング(腐食) ステンレス、アルミニウム、真鍮に感光剤を塗布し、写真製版を応用して耐食性被膜を構成した後、金属を溶解する薬剤によって表面を局部的にエッチング(食刻)して凹凸を形成し、へこんだ部分にメラミン樹脂塗料を流し込む事により製作します。
アルマイト アルマイト銘板は、アルマイト皮膜上に、染色画像を形成し、有機性染料をアルマイト層に浸漬させ、封孔処理して製作します。
シルクスクリーン印刷
(シルク印刷)
版支持板としてメッシュを用い、その上につくられた版画像を通してインキを被印刷体(素材)に移転させ、画像複製をおこなう印刷です。
デジタル印刷 作成したデジタルデータをインクジェット方式のデジタル印刷機により直接素材に印刷します。

それぞれの製法の特長をまとめると下記のようになります。

製法 エッチング アルマイト シルク印刷 デジタル印刷
主な素材※1 ステンレス(SUS) ×
アルミニウム(AL)
真鍮(BS) ×
ポリエステル(PET) × ×
ポリカーボネート(PC) × ×
塩化ビニール(PVC) × ×
表示色※2 × ×
画像再現性※3 × ×
フルカラー※4 × × ×
グラデーション※5 × ×
耐久性※6 屋内
屋外 × ×
曲げ加工※7 × × ×
外形部着色※8 ×
可変情報印刷※9 × × ×
量産性※10 少量 ×
大量 × × ×
少量多品種 × × ×
  • ※1 主な素材は、「〇:選択可,×:選択不可」で評価しています。
  • ※2 表示色は、「〇:指定可,×:選択可」で評価しています。
  • ※3 画像再現性は、「〇:良い,×:悪い」で評価しています。
  • ※4 フルカラーは、「〇:選択可,×:選択不可」で評価しています。
  • ※5 グラデーションは、「〇:選択可,△:各種条件・制限により選択可,×:選択不可」で評価しています。
  • ※6 耐久性は、「〇:使用可,×:使用不可」で評価しています。
  • ※7 曲げ加工は、「〇:適す,×:不適」で評価しています。
  • ※8 外形部着色は、「〇:選択可,△:各種条件・制限により選択可,×:選択不可」で評価しています。
  • ※9 可変情報印刷は、「〇:可,×:不可」で評価しています。
  • ※10 量産性は、「〇:適す,×:不適」で評価しています。

素材

金属・樹脂銘板の素材として、主に下記の素材を使用しています。

金属素材

※下線の素材は、弊社が主に使用している素材です。 ※刻印および梨地・ヘアライン仕上げの場合には板厚0.5mm以上をお勧めします。
素材 主な素材 関連規格 地色 一般的によく使用されている板厚(mm)
0.3 0.5 0.8 1.0 1.5 2.0
ステンレス(SUS) SUS304
SUS430
SUS316
JIS G 4305 銀色
真鍮(BS) C2801P JIS H 3100 金色 -
アルミニウム(AL) A1050P
A1080P
A1070P
A1100P
A1200P
JIS H 4000 銀色

金属素材の表面処理方法として、下記の表面処理をご指定いただけます。

表面処理 SUS BS AL 処理概要
梨地仕上げ 金属表面に機械または化学処理によって微細な凹凸を均一に形成させた艶消し仕上げです。
艶消し仕上げ 苛性ソーダに浸し、表面を荒らしたものです。
ヘアライン仕上げ 連続した細かいすじ模様の仕上げです。ライン方向の指定が必要です。
スピン仕上げ 円形の研磨模様を付けた仕上げです。サーキュラ仕上げとも呼ばれています。
光輝仕上げ × × 電解研磨又は化学研磨によって光輝感のある面を得る仕上げです。この仕上げ方法に適合する素材に高純度アルミニウム、光輝アルミニウム合金などがあります。
サンドブラスト 圧縮空気又は遠心力などで、砂又は粒状の研磨剤を品物に吹き付けて行う表面加工方法です。
ショットブラスト 圧縮空気又は遠心力などで、ショット、カットワイヤなどを品物に吹き付けて行う表面加工方法です。
クリアー塗装 メラミン樹脂塗料クリアーで表面を保護します。使用環境によりクリアー塗装をしない方がよい場合もあります。

樹脂素材

素材 地色 一般的によく使用されている板厚(mm)
0.125 0.18 0.188 0.25 0.3 0.5 1.0
ポリエステル(PET) 透明 - - - -
ポリカーボネート(PC) 透明 - - -
塩化ビニール(PVC) 透明/白 - - - -

樹脂素材の外観仕様として、下記の仕様をご指定いただけます。

外観仕様 PET PC PVC 処理概要
表面ハードコート素材 × × ポリエステルの表面に特殊コーティングが施されており、耐擦傷性を持たせた素材です。
表面マット素材 × × ポリカーボネートの表面がマット形状に加工された素材です。耐擦傷性があり、LED等の光源装置の拡散カバーとしても使用できます。
表面シボ素材 × × ポリカーボネートの表面がシボ形状に加工された素材です。優れた耐擦傷性があるため、傷つきにくさが要求される表面フィルムに特に適しています。更に、拡散効果も期待でき、LED等の光源装置の拡散カバーとしても使用できます。
ポリエステル(PET)
強度、剛性、耐熱性、耐クリープ性、ブロー成形性の良さから、PETボトルとして大量に使用されています。正式名は「ポリエチレンテレフタレート」です。東レ株式会社製タフトップは、ポリエステルの表面に耐スクラッチ性を持たせたフィルムで、キーシートなどの操作部に使用されています。代表的な商品としては、東レ株式会社製タフトップやルミラーがあり、主に0.1mm、0.125mm、0.188mm、0.25mmの板厚が利用されています。
【主な商品名】
タフトップ100L-B2T0、125L-B2T0、188L-B2T0など

ポリカーボネート(PC)
代表的なエンジニアリングプラスチックであり、強靱で透明性、耐熱性、寸法安定性、難燃性、絶縁性などに優れ、特に衝撃強度は熱可塑性樹脂でも最高に近い値を示します。耐化学薬品性、耐溶剤性に弱点があります。代表的な商品としては、AGC株式会社製カーボグラスフィルムや三菱ガス化学株式会社製ユーピロンフィルムがあり、主に0.18mm、0.25mm、 0.3mm、0.5mmの板厚が利用されています。
【主な商品名】
カーボグラスフィルムC210C、C230Cなど

塩化ビニール(PVC)
空気、湿気を通しにくく、耐水、耐酸、耐アルカリ、耐溶剤性に優れています。難燃性で、光や熱に安定ではありませんが耐候性はかなりよいです。焼却処分時のダイオキシン発生が問題視されています。主に0.3mm、0.5mm、1.0mmの板厚が利用されています。

ABS
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの3成分からなる耐衝撃性樹脂で、これらの3成分の頭文字をとってABS樹脂と呼ばれています。特徴は、広い温度範囲にわたって秀れた耐衝撃強度、引張り強さ、剛性、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れています。用途としては、家庭電話部品・自動車部品、一般機器ハウジング等に使用されています。

アクリル
透明度が高く、表面硬度もかなり高いため耐衝撃用有機ガラスとして利用されています。耐候性は良く、コストも比較的安いです。100℃程度の熱を加えることにより軟化するため、自由に変形が可能な加工性がある反面、耐熱性が低く、強アルカリや有機溶剤には侵されてしまいます。

  • ※樹脂素材の規格として、一部製品に限定されますが、UL 94 / UL 746Bを取得しているものもあります。

保護テープ(マスキングテープ)

保護テープとは、容易に剥がすことのできる粘着剤を塗布した透明フィルムです。製品の加工・輸送・保管時に発生するキズ、汚れ等から製品の表面を保護する役割を果たします。弊社標準品として下記の保護テープ(マスキングテープ)を用意しています。また、下記以外にも多種多様な保護テープをご指定いただけます。下記以外の保護テープをご希望される場合には、別途、弊社営業担当までご相談ください。

保護テープ
 Type 厚み(mm) 粘着力(N/20mm)
ステンレス アルミニウム
強粘着 0.06 3.0 3.5
弱粘着 0.06 1.3 0.6

※上記の数値は実測値であり、保証値ではありません。

両面テープ

両面テープとは、表と裏の両方が粘着するようになっている接着テープで、物と物を貼付ける役割を果たします。銘板に両面テープを貼付けることにより、容易に被着体への貼付けが可能です。弊社標準品として下記の両面テープを用意しています。また、下記以外にも多種多様な両面テープをご指定いただけます。下記以外の両面テープをご希望される場合には、別途、弊社営業担当までご相談ください。

両面テープ
 Type 厚み(mm) 180℃引きはがし粘着力(N/20mm) 基材
強粘着 0.17 12.5 不織布
普通粘着 0.15 12.0 不織布

※上記の数値は実測値であり、保証値ではありません。

外形仕上げ

金属銘板の外形仕上げ

金属銘板の主な外形仕上げ方法は「個別切断・R取り・穴あけ」または「プレス」となります。


①個別切断・R取り・穴あけ

※上記板厚より厚い板をご希望される場合には、別途、営業担当者にご相談ください。
加工
方法
加工概要 加工可能な板厚
SUS BS AL
切断 切断機を使用し、外形の切断加工する仕上げ方法です。 1.6㎜以下 3.2㎜以下 4.0㎜以下
R取り 切断後、R形状の金型を使用し、個別にプレス加工する仕上げ方法です。 1.0㎜以下 1.0㎜以下 2.0㎜以下
穴あけ 円形の金型を使用し、個別にプレス加工する仕上げ方法です。 1.0㎜以下 1.0㎜以下 2.0㎜以下
加工精度
寸法公差 ±1.0mm
抜き位置公差 ±0.5mm

【弊社所有円形金型(φ)】

1.4 1.6 2.0 2.2 2.3 2.5 2.8 3.0 3.2 3.3
3.5 3.8 4.0 4.2 4.5 4.8 5.0 5.2 5.5 6.0
6.2 6.5 7.0 7.5 8.0 8.2 8.5 9.0 9.5 10.0
10.5 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0
15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0
20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0

【弊社所有R取り金型】

2R 3R 4R 5R 6R 8R 10R 15R

②プレス

プレス金型を使用し、プレス加工する外形仕上げ方法です。特殊形状に加工する場合や数量が見込まれる場合、精度が要求される場合などに利用します。

加工精度
寸法公差 ±0.1mm
抜き位置公差 ±0.3mm
プレス機 【プレス機】
自動送りプレス機 【自動送りプレス】
プレス金型 【プレス金型】

樹脂銘板の外形仕上げ

樹脂銘板の主な外形仕上げ方法は「トムソンプレス」となります。

トムソン刃型を使用して、主に樹脂銘板の外形加工をする方法です。

※使用する材料、厚み等により公差が変わります。
トムソンプレス加工精度
寸法公差 ±0.2mm
抜き位置公差 ±0.3mm
トムソン刃 【トムソン刃】

製作の流れ

一般的な金属・樹脂銘板の製作の流れは、下記の通りです。


①製品仕様打合せ
金属・樹脂銘板は、使用環境や使用目的、製作数量等により、適した製法、素材が異なり、その選択には十分な検討が必要となります。 金属・樹脂銘板のご選定についてはお気軽に弊社営業担当までご相談ください。その際には、下記の点についてお知らせください。
  • (1)用途
  • (2)使用環境
  • (3)使用期間
  • (4)使用予定数量
  • (5)現状の製品仕様
  • (6)現状の問題点
  • (7)その他、ご要望事項
  • ※東京および名古屋近郊のお客様は、必要に応じてお打合せにお伺いさせていただきます。
  • ※東京および名古屋近郊以外のお客様は、基本的に電話およびメールでの対応となります。

②製品仕様・価格のご確認
上記打合せ後、弊社から推奨製品仕様および製品価格を提示させていただきます。

③ご発注
製品仕様および製品価格にご納得いただけましたら、ご発注ください。

④版下原稿作成
版下原稿とは、製版して印刷するための元になるものです。

⑤製作
製作期間は、銘板の製品種別、製品仕様、数量、弊社繁忙状況等によってかわりますが、概ね2週間~2ヶ月程度です。ご希望納期をお知らせいただければ、極力、調整いたします。

⑥お届け
基本的に宅配便によりお届けさせていただきます。
  • ※東京および名古屋近郊のお客様は、必要に応じて納品にお伺いさせていただきます。
  • ※東京および名古屋近郊以外のお客様は、基本的に宅配便での納品となります。

環境対応

【有害物質調査手順】

近年、RoHS規制、JAMA、JAMP(chemSHERPA)等環境対応に関する調査依頼が増加する傾向にあります。弊社においては、いち早く、ご要望に対応するため、下記手順において環境調査を行っております。

  •  1)ご要望いただいた製品の使われている材質等の調査分類。
  •  2)対象製品の材質の購入先調査。
  •  3)購入先に対して、調査対象物質の含有の有無、必要な場合は含有量の調査依頼。
  •  4)含有有無の回答、必要な場合は含有量をサイズ、重量より算出。

【調査対応規制/規格】

  •  ・RoHS規制
  •  ・JAMA
  •  ・JAMP(chemSHERPA)
  •  ・IMDS
  •  ・REACH規制(SVHC)

【有害物質調査ご依頼時の注意点】

有害物質等調査いただく際には下記事項にご留意願います。

  •  1)調査対象製品をご指定願います。
    使用材質等がわかるもの(図面等)があればより敏速な対応が可能です。
  •  2)調査対象物質をご指定願います。
    調査対象物質が多いほど、より調査に多くの時間が必要となります。
  •  3)調査対象範囲をご指定願います。(含有有無のみもしくは含有量まで)
    含有量調査を含める場合はより多くの時間が必要となる場合があります。また企業秘密等の理由から、含有量が○○以下とまでしか公表できない場合もあります。
  •  4)その他必要な添付書類を指定願います。(技術資料、MSDS等)

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金属・樹脂銘板基礎知識 ◯銘板の規格 ◯支給データデザインの注意点


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